虐待と精神病(心の闇)

保育園卒園の頃までの話

順調に思えた彼の人生
だがある時、幼いながらも覚悟をしなければならない時が来ることになる

 

幼い彼には知る由も無かったことだが、大人の世界は
厳しいものだったようだ
1.近所トラブル、嫌がらせ
2.大姑、姑からの嫌がらせ
3.父の仕事がうまくいかない
など、母には苦労が絶えなかったようで、毎日の生活の中で
結婚前に貯めた貯金を切り崩しながら生活を支えていたらしい
母は100万円以上の貯金を全て使い切ってしまった
加えて父の会社に寄生していた暴力団に150万円を払わなければ
いけなくなり、母の父(彼の祖父)から父はお金を借り受け
必ず返すという借用書も書いた
祖父は返さなくていいと言っていたようだが・・・
暴力団とのいざこざも激しくなり、裁判にまで発展した

 

そのほか様々な経緯をへて母に変化が現れたのだ

 

ある日、いつものように親友のYと彼の家で遊んでいた時のことである
遠巻きに母と姉がY君のことを嫌な目で何かを話していた
彼は不審に思い、何事かを母に尋ねた
母「Y君がテーブルに足を乗せていて汚い」
彼は心の中で「そうかなぁ」と思いつつ母に合わせるようにうなずいた
Y君が帰った後、母は懸命にY君がいた場所を掃除していた
彼はこれまでに無い違和感と言い知れぬ不安を感じていた

 

ある日、保育園から帰ると母が
「足を洗わないと家に上がれない」と言い出した
彼は違和感を感じながらも足を洗い、家に上がる
母がいないときには大姑(彼の曾祖母)
がやっている昔ながらのタバコ屋さんでテレビを見て時間を潰していた
曾祖父から「家に上がらないの?」と聞かれた彼は
「足を洗わんと家に上がれない」と正直に答えたがために
母にとても怒られてしまった
思えば母に怒られたことはその時が初めてではなかっただろうか
その後もねちねちとそのことについて言われた
彼「お母さんてこんな人だったかな?」
そう思った

 

そんな生活が始まり、家の様子や家族の人たちの雰囲気が変わり始めた
ことを、彼は知らずのうちに感じ取っていた
言葉にするならば[冷たい、かみ合っていない、不安定]
という感じだっただろうか
丁度その頃から、彼はオネショをするようになった
以前は夜中にトイレに行きたくなって2階から1階のトイレに行くのが
怖くて母についてきてもらっていたのだが、彼は夜中に起きて気が付くのだ
股間のあたりが暖かい又は冷たい と
よく見たらお漏らしをしているのだ
初めはシーツを変え、朝になって布団を干して終わりだった
そのうち母はオネショに過敏になっていった(それは仕方のないことだと思う)
毎日毎日オネショをする、全く気付かない、温かいか冷たい感覚を感じるまで
気付かない
そして、夢を見る
その頃は夢かうつつか分からない
例えば、テレビ画面を4分割にして、その分割の隙間に虫がウジャウジャいる
4分割の画面には、父の怒っている顔や家族の誰かが何かをしている映像
4つそれぞれ違う映像が映っている
そのほか、[人の顔]その顔が無表情で怖い
その無表情の顔が自分の眼前に迫ってきて恐怖で目が覚める、漏らしている

 

そのうち父と姑、妹との言い争いや父の怒号が夕食中に飛び交うようになった
幼い彼には内容などは全くわからない
大人の事情、大人の話なのだろう
父のことがだんだん嫌い(怖い)になっていく
母のことが心配になっていく
父が自分に冷たくなっていく
ある日、彼は父や母の態度を見て
[ああ・もうこれまでみたいな(幸せな)生活は送れないんだな]
と覚悟にも似た気持ち、感情になった
今思えば、幼い彼が[覚悟]を決めた瞬間だったのだろう

 

不安定な精神状態のまま彼の保育園卒園が迫っていた
もうこの頃には父の存在は彼にとって嫌なもの、恐怖でしかなかった

 

小学校への入学の準備が進む中
彼は母方の祖父にランドセルを買ってもらい、それを受け取るために
母の実家に行ったときの事
母と祖父が父との離婚の話をしているのを聞いてしまった
その当時の彼は[離婚]などという事ができることなど
全く知らなかった
彼は「これしかない!」と思った
祖父との話が終わった母に彼は泣いて頼み込んだ


「お父さんと離婚して!!お願いやから」
だが母は離婚に踏み切ることは無かった
当時女性が一人で子供を抱えて生きていくのは現代以上に
大変なこと、そして母はこの時お腹の中に彼の弟がいたのだ
そして更に母は強迫神経症になっていたのだ
離婚をするには相当なハンデがあった
彼は落胆した

 

この時母は精神病院で言い渡された心の病に
この先の人生がとても過酷なものになる
どうしたらいいのか分からなくなっていた

 

彼の幼稚園卒園と同時に彼ら家族は本家からの引っ越しを決めた
母の病気のこともあり、母の兄が管理する古いアパートに
仮住まいすることになった

 

 


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